小田深山渓谷は美しい。それも、特別に美しい。
渓谷の宝庫・四国において一番美しい渓谷を選ぶならば小田深山渓谷だ。個人的にはそう確信しています。
小田深山渓谷は仁淀川水系の源流のひとつです。山深くに位置するにもかかわらず、日当たりが良いためか鬱蒼とした雰囲気はゼロ。そして、”澄み切った”としか表現しようのない清流。木漏れ日あふれる清流沿いの散策は最高の自然体験を提供してくれること間違いなしです。
山と渓谷を愛する私にとって、四国という地域限定でも愛してやまない渓谷はたくさんあります。安居渓谷(高知県)・面河渓(愛媛県)・高の瀬峡(徳島県)・祖谷渓(徳島県)などはその代表格ですが、これらと比べても小田深山渓谷のほうがちょっと上ですね。もちろん、これらの渓谷にも地形的・水系的な特徴があり、単純に甲乙つけることはできないのですが、「観光」という文脈でひとつだけオススメするなら間違いなく小田深山渓谷をオススメします。
これほどまで小田深山渓谷を絶賛する理由とは。
これぞ”澄み切った”清流
これぞ澄み切った清流。
使い古されて新鮮味のなくなった表現ですが、小田深山渓谷の水流はまさに「澄み切った清流」そのもの。どれほど水深が深くても川底がハッキリとみえるほど透明度の高い水流は、沢山の清流を抱える四国においても特別な存在です。
ふつうは水深数メートルにもなると川底が霞んで見えたりして、”濁り”のようなものを感じるのですが、小田深山渓谷においてそのような感覚は皆無です。
清流を引き立てる特徴的な岩
これ、未加工の写真ですからね。
小田深山渓谷を特徴付ける「特徴的な岩」。小田深山渓谷を形成する岩岩の色彩には驚かされるばかりです。驚くほどに赤い岩がその代表格ですが、青みがかった清流と赤い岩のコントラストは、まるで外国!とか言いたくなるほど非日常的な景観です。
この色とりどりの、川底の石を見てください。
小田深山渓谷の岩や石の色彩は本当にユニークです。青みがかった水流だけだと時に単調にも感じることがありますが、色彩豊かな川底の石が実に美しく花を添えてくれるので、変化に富んでいて飽きることがありません。
水流沿いの遊歩道が素敵
なだらかな地形、苔むした岩々、美しい落葉樹林。
小田深山渓谷の水流沿いにつけられた遊歩道を利用すれば、水流のすぐそばを心ゆくまで散策できます。対岸には車道があるのですが、それを感じさせない秘境感がGood。危険箇所には木道があり、晴れの日はスニーカーでも安心して散策できる環境です。
遊歩道の中にはこんな丸太橋も。片側しか手すりが無いスリリングな丸太橋なのですが、そのぶん清流を肌で感じることができます。
小田深山渓谷といえば紅葉
小田深山渓谷といえば紅葉が有名です。清流+紅葉となれば美しいのは当然のことですが、小田深山渓谷ならではの特徴は、水流近くまで樹木が密集していることでしょう。
渓谷における紅葉って、目で見ると美しいのですが、いざ写真に収めようとすると紅葉と水流が離れすぎて「清流+紅葉」感がほとんどない、なんてことがよくあります。小田深山渓谷では清流と紅葉は常にセットなのでご安心を。水流スレスレ、ときには水流に片足を突っ込んでいる木までも美しく紅葉するので、素晴らしい写真になること間違いなしです。
紅葉の時期は例年10月終盤〜11月中盤です。この写真のように緑と紅葉が混じる時期前半も素敵ですし、先ほどの写真のように散りかけの紅葉も素敵です。これも、澄み切った清流や特徴的な岩をはじめとする小田深山渓谷の特徴のおかげです。
私が小田深山渓谷を四国で一番オススメする理由をお分りいただけたでしょうか。これ以降は時期ごとの景観をご紹介します。
小田深山渓谷の四季
5月中旬〜6月:新緑
紅葉の美しさが有名な小田深山渓谷ですが、新緑の時期も魅力的です。穏やかな水流が新緑によって清々しい緑に染まるこの季節、山間地の春を思いっきり満喫できます。
7月〜9月:緑の木々と清流
標高が1000メートル以上ある小田深山渓谷は真夏でも涼しいのが特徴です。水流沿いは真夏でもひんやりするほどで、避暑にうってつけの場所と言えるでしょう。
10月終盤〜11月中盤:紅葉
場所によって日当たりが大きく違うからか、真夏のように青々しい葉をつけた木があったかと思うと、少し先に行には黄色、赤と色彩豊かな紅葉を見ることができます。
落葉の始まる紅葉終盤が、小田深山渓谷で一番オススメの時期です。落葉が始まった紅葉というのはどこか寂しげで、冬の到来を肌で感じてしんみりとした感覚に陥るものです。しかし、小田深山渓谷では散りゆく紅葉が穏やかな水流と調和して、「侘び・寂び」すら感じる日本的な空間になります。この時期になると訪問者も少ない場合が多く、ひっそりとした空間の中、心ゆくまで小田深山渓谷の絶景を独り占めすることができるのもオススメのポイントです。
12月〜2月:雪の渓谷
新緑や紅葉の時期が人気の小田深山渓谷ですが、厳冬期の景観もなかなかのもの。他の季節では味わえない、しんとした空間を堪能できるのは厳冬期ならではです。
訪問時に知っておきたい3つのポイント
1.道幅の狭い山道を利用します
四国カルストからほど近い山中に位置する小田深山渓谷へは、道幅の狭い山道を利用してのアクセスになります。場所によっては対向車とすれ違えないほど狭い場所もあり、慎重な運転が必要です。一方で、全域にわたり舗装された道はゆっくり走る分には全く問題無いため、時間に余裕を持ってアクセスしたいところです。
2.歩きやすい靴がおすすめ
小田深山渓谷は全域にわたり歩きやすい遊歩道が整備されているものの、渓谷沿いということもあり濡れていたり、ぬかるんでいる場所もあるため、歩きやすい靴での訪問がベター。
3.防寒着をお忘れなく
標高750~1560mと、かなり標高の高い場所に位置する小田深山渓谷は、平地よりも5〜10度くらい気温が低いため、夏でも防寒着の携帯をおすすめします。特に水流沿いは、冷たい水流によって冷やされた風が常に吹いていて想像以上に涼しいこともあるため注意が必要です。