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宮之浦川 龍王の滝|キャニオニング(小楊枝川 沢登り|継続)

ゴルジュクラブが執筆しました

私が沢登りを始める前のこと、学生時代からの趣味だった車中泊旅行で目的地にしていたのは、もっぱら『日本の滝百選』だった。どういうことか学生時代から滝が好きで、一眼レフを首に下げて全国の滝を巡っていた。日本には数多の滝がある。称名滝、那智の滝、不動七重の滝、など、日本を代表する名瀑は観光地となっていることが多く、遠目に見るだけならそれほど難しいものではない。

そのなかで、今回紹介する「龍王の滝(屋久島・宮之浦川)」は、滝愛好家にとって知名度こそあれど、その姿を見るのは容易では無い滝として有名だ。龍王の滝は、日本の滝百選ではない。しかし、アクセスが容易な場所にあれば間違いなく百選、いや、十選に入ってもおかしくない滝で、一度はお目にかかりたいと思っていた。

小楊枝川 沢登り – 宮之浦川 キャニオニング(継続)|2025,05,10 ~ 14
メンバー:ゴルジュスズキ、木村商店、リュウスケ

宮之浦川・龍王の滝は、滝好きなら誰もが憧れる名瀑だ。その端正な姿は日本の滝百選に選ばれる滝たちと比べても抜きん出て美しく、滝ヤの憧憬を集めている。

龍王の滝へのアプローチは沢登り技術が必須となる。それも普通レベルではなく、結構難しい部類の沢登りを要求されるらしい。しかも、龍王の滝上部には、一般的に龍王の滝とされる直瀑35mよりもはるかに大きい滝が隠されているというではないか。数年前から沢登りに没頭してきた今なら、それらをまとめて観光できるかもしれない。

龍王の滝、ひいては宮之浦川へのアプローチはさまざまな方法がある。滝だけを見たいなら下部林道から龍王の滝まで遡行するのが最もシンプルだ。沢登りでは侵入困難な、龍王の滝から上流へと断続的に続くゴルジュ区間の全貌を拝むためにはキャニオニング以外の方法はない。

昨年、宮之浦川と並び、屋久島 三大険谷のひとつ瀬切川をキャニオニングしていることもあり、残す二本は宮之浦川と小楊枝川だ。宮之浦川と小楊枝川は、屋久島中央に聳える九州最高峰「宮之浦岳」を中心に屋久島を南北に貫いている。せっかくなので継続遡下行とし、屋久島縦断、SEA TO SUMMIT TO SEAとしようではないか。

小楊枝川 遡行

昨日までの雨で増水する小楊枝川に入渓する。下部ゴルジュから遡行開始しようとするも、あまりの水量に一般的な入渓地点となる林道終点までハイクアップしてC1。翌日以降の遡行については写真参照。『一生で一度は訪れるべき』と、”危ない男 テル(大木輝一)”から強く推薦された理由を、身をもって理解する。

周辺の植生は屋久島のなかで特に素晴らしいが、植生を楽しみたいのなら並走する「花山歩道」をハイキングした方がマシだ。側壁のスラブも確かに素晴らしいが、屋久島の主だった渓谷にはこれ以上のものがいくらでもある。

小楊枝川の魅力は、日本百名谷 随一のスーパーゴーロと、小楊枝大滝の世界一気持ちいい高巻きだ。

宮之浦川 下降|キャニオニング

小楊枝川の沢登りでMP(メンタルポイント)がゼロになった我々を待ち受けていたのは、『物理的に前進できない』と噂の、宮之浦川 源頭の藪。下降だから多少はマシだが、沢登りで源頭まで詰めた先人たちの苦労は、想像を絶するものだ。顔を笹の葉に裂かれ、笹の根に足を取られ転げ、藪に覆われて全く見えない水路に墜落し、呪いの言葉を吐きながらズルズルと進み、本流に到着。と、同時にスッキリとした渓谷になる。

源頭から小楊枝川とは明らかに異なる、滝、釜が連続する空間だ。少し前進すると、ロープなしには下降できない滝が連続するようになる。宮之浦川はすでに下降されたことのある渓谷で、その開拓者(故人)とは面識は無いのだが、残置されたアンカーに、開拓者のセンスと情熱を感じずにはいられない。私もこのような情熱を持って渓谷に挑み続けたいものだ。

沢登りでは手も足も出ないようなゴルジュ区間と、上流部とは思えない壮大なスケール感の河原が交互に現れる空間を進む。宮之浦川に入ってからは晴天続きで、花崗岩の白と、宮之浦川の清流が眩しい。標高1000m付近の屈曲部を過ぎると、いよいよ目的地『龍王の滝』だ。一般的に35mとされる下段の上に、約70mの上段が隠されているらしい。実際には上段と下段の間には50mほどの水路があり、別々の滝とする方が自然と思われるが、一続きのゴルジュ地形のなか、これだけの落差を落ちる滝はそうそうあるものでは無い。

龍王の滝上部から、内部を覗き込む。事前情報通り相当の落差で、右岸のスラブは150mくらいありそうだ。このあたりは世界遺産に登録される地域であり、ボルトを打つことはできない。なんとか下降できそうな灌木までトラバースして下降開始。龍王の滝上段の落口少し下から下降するがラペルピッチは60m。やはり、相当の落差だ。上段と下段の間の水路にはCSが挟まり、サイフォンとなっている。CSのサイズからして潜り抜けるのは非現実的だが、果たして乗り上がることはできるのだろうか?乗り上げられなければ側壁を60m登り返して脱出しなければならない。

幸い、CSは上部からのオブザベよりも簡単に上陸できた。やはり、渓谷は実際に触れ合ってみなければわからないものだ。日没が迫るなか、下段の龍王の滝を下降し、C4とした。

5日目。技術的にはグッと優しくなるが、それでも険しいゴルジュ地形が続く宮之浦川を下降していく。滑床が現れるようになると、まもなく林道と交差して下降終了。長い長い林道歩きに辟易し、電波が通った瞬間にタクシーを呼ぼうと方々に連絡するも、どこも『観光の予約でいっぱいです』。さすが、世界遺産。当然宿も取れないので、港の裏でごろ寝して、翌朝の船で島を出た。

総評

宮之浦川の源頭〜龍王の滝にかけてのセクションは、険しいゴルジュ地形が断続的に現れ、屋久島有数の険谷となっている。龍王の滝の景観は期待通りのもので、端正な佇まいは日本の滝を代表する景観と断言できるもの。花崗岩ならではのゴルジュの世界観は、本州のそれよりも、九州エリアの方がよりハッキリと魅力的だ。

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