湧ヶ淵|沢登り

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愛媛県松山市のはずれに、過去、観光地として開発されたミニゴルジュがある。

愛媛県北部〜しまなみ海道にかけてのエリアは広大な花崗岩大地で、地質だけ見れば良渓が立ち並んでいても不思議ではない。しかし、勾配がほとんどない地形や、エリア内の山体が総じて小さいことなどの条件が重なり、沢登りに適した渓谷はほとんど存在しない。

そのなかで、唯一、花崗岩の良さが顕著に現れているのが湧ヶ淵だ。上流のダムにより水は濁り、観光開発により取水されて水量も本来のものではない。遡行対象となる区間も、水平距離にしてわずか100メートルしかない。

だが、過去に大水量で彫刻された花崗岩の側壁は、界隈で抜きん出た存在感を放つ。ゴルジュ突破として楽しめるポイントもいくつかあり、想像以上に満足のいく遡行となった。

ちなみに、前述の観光開発による取水は、岩盤を貫くトンネルを通り、下流で人口の滝「不動瀧」として渓谷に水を落とす。現代人では思いつきもしない大胆な自然破壊だが、景観としてはおもしろい。そもそも、トンネルで取水されていないと水線遡行できない気がするので、おかげ様で楽しく遊ぶことができるとも言えるかもしれない。

遡行図

湧ヶ淵の場所