昨年から行きたい渓谷リストの上位に位置付けられていた梅花皮沢は、2024年10月初旬に複数パーティーが入渓し完全に未知を失った。梅花皮沢の遡行意欲を無くし意気消沈しているところに、大西氏から偶然にも梅花皮沢と同エリアに位置する桧山沢のお誘いをいただいた。なんでも飯豊山界隈で未知が残る数少ない渓谷で、過去雪渓に埋もれていたゴルジュが姿を表しているかもしれないという。
桧山沢|沢登り|2024.10.9〜10.11
メンバー:大西氏|ゴルジュスズキ|キム|リュウスケ
1日目
本来遡行する予定だった梅花皮沢を通り過ぎ吊り橋付近から入渓。さっそく淵となり側壁が岩盤になる。桧山沢は地形図からの想像とは異なり、小さいものも含めれば中部セクションまでの大半部分がゴルジュ地形の美渓だ。前日までの降雨の影響で一部水線突破できない滝もあり、適当に小さく巻きながら距離を稼ぐ。
昼過ぎに現れた二段10mが初日の核心。樋状に収束した水流が大釜に刺さる迫力のある滝だ。ここはリュウスケがリード。中間部以降はなんとか登れそうに見えるがそもそも取り付けるの?という感じの滝で案の定激流の釜で5mほどエイドトラバースとなる。気温が低く水は冷たい。リュウスケには悪いがビレイを放棄して滝の飛沫が届かない場所で三人寄り添いながら見物する。「かっこいいトラバースなのに全身真っ黒のウエアで写真映えしないなあ、リュウスケ」などと考えながらウトウトしている間に無事登攀終了。その先でキャンプ1とした。
2日目
見栄えの良い滝が連続するゴルジュを快適に越えていくとco700にて見栄えの良い大滝が現れる。周囲の地形のスケールが大きく台湾の大渓谷のよう(大西氏)だ。
co830から始まる河原を過ぎると谷は左曲して今回のメインディッシュ不動滝ゴルジュとなる。すぐさま鋭角に屈曲する水路となり、その奥にZ状4m。その後も続け様に滝が現れ、脱出困難な地形が続く。二条に水を落とす6mCSを越えた先で谷が右曲し、その先には一見して突破困難な7mCS。左岸からテラスに乗りトラバースしていくと、その先に強烈なプレッシャーを放つゴルジュ連瀑帯が姿を表した。ここから見る限り通過は困難に見えるが、実際に取り付いてゴルジュと触れ合わずに突破を断念するわけには行かない。
後退用のバックアップを残しつつ厳ついゴルジュの底へ降り立つ。幸い上部まで抜けるラインがつながっていて日暮れ前に安全地帯まで抜けることができた。なんとも見栄えの良い8mの滝壺横を苦労しながら整地してキャンプ2とした。
3日目
初っ端の高巻きをこなすと谷はずいぶん開け源頭の雰囲気となった。ゴルジュ地形こそ現れなくなるが滝が連続する爽快なセクションだ。co1900にて尾根に乗り30分ほど藪を漕いで登山道と合流。下山は飯豊山頂を経由して6時間。めちゃくちゃ長かった。
遡行図
総評
全体を通し間延び区間が少なく、水線付近の突破が可能な秀渓。大西氏をして飯豊のなかで特に当たりと評す渓谷で、その内容は濃い。不動滝ゴルジュは厳しさと美しさを兼ね備え、ゴルジュ突破の総合力を試される。