浄の滝|沢登り

沢登りを始めた頃からずっと気になっていた沢ヤと一緒に日本を代表する大渓谷でキャニオニングの予定だったがゲリラ豪雨でテン場は水没し、渓谷も大増水してなす術なく逃走。翌朝源頭の小川で用を足し軽装で湖を泳いでいたらセクシー登山部のレッテルを貼られてイジられた。天然ウォシュレットで用を足すのが沢ヤのマナーだと思っていたが私のまわりだけの常識なのかもしれない。

転戦先など大して調べていなかった我々が苦し紛れに選んだのが山形県『浄の滝』だった。過去に登攀記録が一件あるのみでそれ以降の記録は見当たらない。小渓谷ゆえ多少増水していても大丈夫でしょ、と軽いノリで入渓した。

ちなみに私に浄の滝の存在を教えてくれたのは東北一モテる沢ヤで、登攀に誘ってもらっていたが悪天候で順延になった経緯がある。予定していたメンバーで再トライしたいと思っていたが、遠征隊リーダーから浄の滝を提案され0.5秒で抜け駆けを決心した。ごめんね。

浄の滝は山形県・高倉山1054mを源頭とする公称落差80mの大滝だ。これは下部から展望できる範囲の話で、実際は総落差200m以上のゴルジュ連瀑帯となっている。自治体の空撮動画を見る限り地形の険しさはなかなかのもので、厳しい登攀の連続が予感された。

まあ、沢ヤの神とサラブレッドのコンビがメンバーだし余裕でしょ、と思っていたら入渓地点は昨晩の雨で濁流になっている。本当に大丈夫か?という疑問が頭に浮かぶがメンバーの二人は常にイケイケで全く気にしていないようなので、私も気にしないことにした。

浄の滝|沢登り|2024.09.19
メンバー:大西氏|テル君|ゴルジュスズキ

登山道を歩くこと1.5時間、唐突に目に飛び込んできたのは150mはあろうかという浄の滝側壁だった。なんとも厳つい見た目をしており、その中心から吐き出される濁流は今日の遡行が一筋縄ではいかないことを明示しているが、我々にとって重要なのは足元に散らばる「お宝」を探すことだった。理由は不明だが浄の滝周辺には綺麗な石ころが多く形状やカラーバリエーションも様々で美しい。時刻は8時。日帰り予定で時間の余裕は全く無いのだが満足するまで宝探しに没頭した。

宝探しに飽きてきたところで登攀開始。F1・F2をフリーで快適に越えるとすぐに核心部となる。側壁は大きくハングしていて侵入者の前進を阻む。深く侵食された地形の先に見えるF4は濁流を水路に叩きつけ迫力がありいかにも難しそうだが意外にも弱点が存在した。

浄の滝は見た目こそ絶望的だが突っ込めばなんとかなることが多く岩質も結構しっかりしている。これほどの威圧感と総落差をもつゴルジュ連瀑帯で水線突破可能なものは全国的に珍しく、ゴルジュ登攀の対象として日本屈指の一本と言えるだろう。

今回は濁流となるほど増水している中でのトライだったが意外にも快適な遡行だった。co580二俣まで偵察し、下山はco550左岸支流からコルを乗越して隣の沢形を下降した。

総評

水線を登攀可能なゴルジュ連瀑帯として非常に価値のある一本。ゴルジュ内に途切れることなく滝を連続させ、総落差200m以上の急峻な連瀑帯となっている。河原に散らばる石ころが綺麗。

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