”日本最後の秘境”と大々的に宣伝される徳島県の観光地『祖谷渓』の少し北に松尾川はある。秘境の皮を被った一大観光地のすぐ隣にありながら、松尾川流域は開発の魔の手から逃れ、本当の秘境さながらの環境を維持している。
数多くの支流をもつ松尾川は意外にも沢登りの情報は少ない。支流のひとつ『坂瀬川』の記録がネット上で確認できるが、それ以外は未知に包まれたエリアだった。
2024.08.17、四国遠征の客人を迎えようと準備していたところ、諸般の事情で当日キャンセルとなる。せっかく沢に行く準備をしていたので、後回しにしていた松尾川の支流をまとめて開拓することにした。
トチ谷|キャニオニング
トチ谷は隣接する『長谷川』とともに水平距離200mで200mも標高を落とし松尾川に合流する、急峻な渓谷だ。隣の長谷川とともに、滝ヤの記録が断片的に残る。
地形図からは連瀑帯を内包する険渓の予感がした。トチ谷の集水域は0.5km2と超小渓谷ではあるが、地形次第では高知県の『程野の滝』のように登攀やキャニオニングの対象として魅力的かもしれない。
連瀑帯を予感させるセクション直上の県道から下降開始。すぐに大滝が現れるもそれ以降は何もなく、あっけなく松尾川へと合流した。
長谷川|沢登り
長谷川の集水域は1.8km2で、小渓谷ではあるが極端に小さいわけではない。しかし松尾川本流に注ぎ込む長谷川の水量は隣のトチ谷(集水域0.5km2)と比べてもはるかに少なく、気をつけていないと見落としてしまうほどだ。極端に水が少ない理由は上部取水堰堤にて大半の水が取水されているためで枯れ沢のような環境。
長谷川にはいくつかの大滝があり、特徴的な地形もある。水量さえそれなりにあれば結構面白い渓谷なだけに取水堰堤の存在が悔やまれる。
松尾川支流無名沢|沢登り
松尾川の支流の中で特に目立つ一本。ゴルジュの存在を感じ訪問するも総じて大味な渓谷だった。変成岩の気難しさが顕著に現れた渓谷で、唐突に大滝が現れたかと思えば小ゴルジュとなり、ゴーロとなる、を繰り返す。それぞれが水の侵食というより摂理の崩落により造形されたもので、緻密さは無い。
上部大滝でこれ以上何も無いと判断し脱渓。
総評
四国の変成岩の特徴が良くでたエリアだった。松尾川流域、といっても目まぐるしく地質が変わり、一概には言えないが今回開拓した渓谷はどれもボロボロだった。ネット上に記録のある『坂瀬川」は未訪問だがなかなか良さそうな渓谷だ。