大雲沢|フナクボ沢大滝|沢登り

台風10号の影響で50m先も霞む豪雨の高速道路を経験したことがない速度で進むワンボックスの後席で、イケイケの沢ヤは運転もイケイケだな、などと思いながら車体にしがみつく。よく見れば左手はハンドルではなく助手席の愛妻の手を握っていて前などあまり見ていない。隣に座る竹中君と半笑いで目を合わせながら明日の山行が良いものになりそうな予感がしていた。

大雲沢は守門岳(1537m)を源頭とする集水域2.5km2の渓谷だ。低山の小渓谷ではあるが苔に覆われた数十メートルの側壁から幾重にも支流滝を落とす幻想的なゴルジュを内包している。

以前から行きたいと思っていたが私のホーム高知からのアクセスの悪さや日帰りの小渓谷であることなどを理由に後回しにしてしまっていた。

今回、最近沢ヤ界隈で名前をよく聞くtamoshima氏パーティに混ぜてもらい遡行する機会を得た。

大雲沢|沢登り|2024.09.01

メンバー:ゴルジュスズキ|tamoshima|sawamafia2人

大雲沢

登山道を15分ほど歩き布引滝の少し下流を目安にクライムダウン。すぐにゴルジュとなる。ゴルジュ内の滝は大きくても10mほどで快適に水線突破できるがラバーソールでないとかなり苦戦する滝があるので注意。

ゴルジュ内最深部では高さ40mの側壁から支流滝がサラサラと幾重にも水を落とし、遥か遠くで陽に照らされた山並みと我々が身を置く陰湿なゴルジュ内との対比が際立ち、この世のものではないような空間のなかで幸せに包まれるが視界の隅で新妻とイチャつくtamoshima氏に「クソ、幸せそうにしやがって」とちょっとだけ嫉妬した。

ゴルジュを抜けると唐突に地形が開け二俣に至る。過去の記録がない中俣へと進むと直登できる滝とコンパクトに巻ける滝が交互に現れる連瀑帯になった。ゴルジュをあっさり抜けてしまったので高巻ける滝を登って遊んだりしながら藪漕ぎほとんど無しで登山道と合流。

下山は快適な登山道で2時間ほど、なのだがtamoshima氏は隣のどう見てもハズレの沢を下降すると言う。マジかよ、と思っていたら、アラスカ・デナリでのパイオニアワークにより貯金が無くなり2ヶ月の住み込みバイトを余儀なくされたことで体力が一般人レベルまで下がっていた北大山岳部OB竹中君が疲れたので登山道で下山したいらしく、喜んでそちらに同行した。

下山後1時間ほど待ち予想通りのクソ沢を下山してきたtamoshima氏と合流。どう見てもハズレとしか思えない沢であっても確認せずには終われないtamoshima氏の開拓精神には頭が下がるばかりだ。夜、氏の奥様は翌日仕事なので新幹線で帰宅するという。妻を新幹線で送り返してでも翌日の沢を優先するとはなんとも筋の通った沢ヤだと大層感心した。

フナクボ沢

翌日、tamoshima氏提案の水線すらない謎沢へ行ってみるとそこには小水量ながら柱状節理の発達した側壁を携える100m大滝が。なんとも見栄えが良く紅葉の時期など相当映えるだろう。私自身も結構開拓をやっている方だと思うが事前に共有された地形図からは、どう見てもハズレの予感がしていた。これほどミニマムな地形に可能性を見出し開拓する情熱としっかりと当たりを引くセンスに今日もちょっとだけ嫉妬した。

下部をフリーソロしてロープを出すとすぐに水線へ。2ピッチで登攀終了。快適に登攀できる良い大滝だった。

総評

大雲沢

ゴルジュ内部の景観は事前にSNS情報などで期待していたとおりの造形。支流滝が幾重にも水を落とす最深部の景観は一見の価値あり。中俣での詰めは登攀力のあるパーティーなら適度な難易度を楽しみながら藪漕ぎほぼ無しで登山道まで詰め上がれる。登山道合流点から頂上までは5分。

フナクボ沢

林道傍にありながらほとんど記録がなく、初登と思われる。水流こそ少ないが岩盤の規模が大きく、迫力のある側壁により見栄えが良い。かなり快適に登攀できるため大滝登攀入門にも良いかもしれない。

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