黒部川を代表する渓谷、柳又谷。”黒部の暴れん坊”と称される豪渓である。45km2という広大な集水域と通年残る雪渓から多量の水を集める大渓谷らしい。
私にとって初めてとなる大渓谷での沢登りだ。本来、柳又谷の遡行適期は雪渓からの溶水が減る9月中旬以降ではあるが、雪渓が大量に残る8月に大水量の柳又谷を体験したく、紀伊半島彷徨クラブの盆休み山行に相乗りさせてもらった。
柳又谷|沢登り|2024.08.10〜13
メンバー:紀伊半島彷徨クラブ4名|ゴルジュクラブ1名
1日目
宇奈月温泉からトロッコ列車に乗る。完全に観光モードでビール片手に観光を楽しんだ。
黒薙駅で下車し、柳又谷と北又谷の本流にあたる黒薙川を遡行開始する。黒薙川は以外にも水量が少なく、これは楽勝なんじゃないか?と期待するのも束の間、『新黒薙第二発電所』を過ぎると谷は本来の大水量を取り戻す。
1日目の行程は大半がゴーロ歩きと激流の渡渉となる。渡渉といっても普通に歩いて渡れる水量ではなく、工夫が必要。初日唯一のゴルジュ『飛竜峡』はホモサピエンスにどうこうできるレベルの水量ではなく高巻き。その後も発狂するくらい長いゴーロが続く。実際に3回くらいは発狂した。
このあたりでは40cmくらいの岩魚が簡単に釣れる。
2日目
1日目のクソゴーロ歩きと激流渡渉でメンバー全員がメンタルブレイクしているが仕方なく遡行スタート。相変わらず水量が多い。上ノ廊下が現れるとゴーロだらけのクソ渓谷から一転、変化に富んだ渓相となり、大ゴルジュと滝が連続する柳又谷の核心部に踏み込んでいく。
上ノ廊下は適当に誤魔化せるセクションも多いが激流に手も足も出せず巻いた滝もあった。『六兵衛谷』出会いにて幕営。
3日目
クラガリ峡の深廊ノ滝三段目以降は雪渓で埋まっていた。序盤の雪渓は崩落箇所も多く、深廊ノ滝一段目右から大高巻きにて回避。途中雪渓歩きを交えながら高度を稼ぐ。
源頭まで詰めると絶景の幕営地があるが、私の防寒着の都合で少し手前の谷中での幕営とさせてもらった。
4日目
幕営地から30分ほどで源頭の花畑に飛び出した。登山道への合流は藪漕ぎゼロで快適。
やっぱり大渓谷は良いですね、最後の最後まで楽しませてくれました。
総評
初めての大渓谷ということもあり印象に強く残る沢旅になった。1日目のゴーロ地帯を除けば大迫力のゴルジュが複数あり、飽きさせない。源頭部の詰めもこれまでに経験したことがないほど風光明媚なもだった。
大水量の渡渉が頻発し、雪渓処理が必要な場面も多い。私が経験したことのある五十沢やザクロ谷など登攀的に難しい沢とは一味違う、大渓谷ならではの厳しさを体験できた。到底1人で遡行できるような渓谷ではなく、遠征に誘ってもらいラッキーでした。紀伊半島彷徨クラブの皆様、お世話になりました。
ちなみに紀伊半島彷徨クラブはメンバーの外見から半グレと思われているが、どんな険渓でも大量の生食材と酒でもてなしてくれるホスピタリティ溢れる沢ヤ集団だ。近場の若くてやる気のある沢ヤは絶対にコンタクトすべし。
下山後に魚津市で何軒か飲み歩いたが相場が高く、翌日に飲んだ名古屋市の倍以上はした(魚津駅近のおにぎり屋はアタリだった)。ちなみに白馬・魚津あたりで飲んだハイボール・レモンハイはどの店も酒を入れ忘れてるんじゃないかと疑うくらい薄い。
詳細な遡行記録はたもしま氏の記録参照。たもしま氏の柳又谷遡行記録