様ノ沢|キャニオニング

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「地名の読みは、明確な根拠がないなら書かないべきだと思います。地元の呼び方と違う読み方をネットで広めてしまったとしたら、それは地元への敬意を欠く行為です。」

大御所からの唐突な指摘に、背筋が伸びた、、、ということはなく、彼らしい連絡にほっこりした。これは彼なりの親切心の発露なのだ。

念の為チャッピーに確認するがやはり様ノ沢の読み方は判然としない、どころか私のブログを根拠に「ざまのさわ」だと主張している。これはまずい。私はすぐに、テキトーに書いたブログタイトルの読み仮名を削除したのだった。

誰か、正しい読み方を知っている方がいらっしゃいましたら教えてください。

私は森吉山が好きだ。「九階の滝」登攀のため森吉山に初めて足を踏み入れたのは2023年のこと。爽快なスラブや豊かな植生は、普段四国や紀伊半島で沢登りしている私にとって同じ日本とは思えない世界観で、強く印象に残った。

もうひとつ記憶に残っていたのが九階の滝が流れ落ちる「様ノ沢」で、地形的に険しく特徴に富むだけでなく、側壁上部に謎の大ケイブが眠っているという。

大ケイブの報告があったのはキャニオニア・スーパースター田中彰氏のSNSで、コメント欄では「軌道跡」「坑道」など様々な憶測が飛び交っていた。渓谷だけでも十分に魅力的だが、未知の大ケイブがセットとなれば行くしかない。

せっかくなので、未知が残されている渓谷にしか行かないという、こだわりの強すぎる男 小坂に声をかけキャニオニングしてきた。

様ノ沢|キャニオニング|2025.9.28
メンバー:小坂(けんじり)|ゴルジュスズキ

玉川温泉から林道を通り、様ノ沢へアプローチする。源頭から滑床が続く。

一昨年登攀した九階の滝は、灌木をつなぎラペル。ここからが様ノ沢の核心部だ。ときに人一人分の幅まで狭まるゴルジュを飛び込んだリクライムダウンしながら下降して行く。

地形図にある滝記号のうち下流のほうの右岸に大ケイブがあるという。過去の数少ない記録では、この滝を下降したあとに大ケイブを発見し、登り返しが困難なことから探索を断念している。

場所を見極め、側壁をトラバースして小尾根を回り込む。すると、確かにそのケイブはそこにあった。平らな床面や、人工的にも見えるアーチ形状など、確かに軌道跡や坑道跡のようにも感じるが、果たして。

内部に踏み込むとケイブは奥行き15mほどで行き止まりとなる。掘削跡や人工物の残留などはなく、どうやら自然にできたもののようだ。内部から外を眺めると、様ノ沢の谷筋が一直線に見渡せた。この渓谷は過去、神の住む場所とされていたようだが、きっと神はこのケイブから谷を見下ろしていたに違いない。

後日、田中彰氏に写真と共に報告を入れると、どうやらこの地形はタフォニのようだ。以下は氏のSNS投稿から抜粋したもの。

様ノ沢のゴルジュには側壁上部に断続的に洞窟が続いていて、あたかも人工の隧道のように見えます。

森林鉄道のトンネル跡だと言う説もありますが、あんな木も生えてないゴルジュの奥に鉄道を伸ばす理由がないし、もっと下流の粒沢との合流点から急にレール跡が現れるので鉄道の終点はその辺りにあったのでしょう。

ではあの洞窟は一体なんなのか?

自然の洞窟だとして石灰岩でもないこの谷でどのようなメカニズムで形成されたのか?

とても気になってました。

その謎が今回の鈴木君達の探検で明らかになりました。

結論から言うとあの洞窟はタフォニだと思われます。

ここの岩は粒子が荒くて風化しやすいのですが、それに加えて渓谷に並行するように一本のクラックが続いています。

そこに染み込んだ水分が凍結と融解を繰り返して岩を破壊して洞窟を形成したのでしょう。

洞窟の付近の岩が土のように風化していたとの証言がそれを物語っています。

通常のタフォニは奥行きの無いドーム状の空間に過ぎませんが長いクラックがあったおかげで連続した隧道のような形状になったと思われます。

床が平らなのは天井から崩れ落ちた岩屑が堆積しているためです。

総評

狭く狭窄された水路、側壁の大スラブ、大ケイブ、九階の滝、、、小渓谷ながら様々な特徴をもつ。私が訪問した際はボルトを使用せず下降できたのも嬉しい点。小渓谷ゆえ水流の脅威はなく、キャニオニング入門にもお勧めできる。

下降図

様ノ沢(ざまのさわ)の場所