蛇の釜は、第三紀層と呼ばれる古い堆積岩の中の比較的やわらかい部分が、長年にわたる久谷川の侵蝕によって削り取られ、洞穴状になったものである。鍾乳石が何個も垂れ下がっているのが見られる。川床には、急流の運んだ石が回転してオントルメントと呼ばれる甌穴(釜)が二つあり、地元ではオントルメントとメトントルと呼ばれている。なお、オントルメントには雌雄二匹の蛇が棲んでいるとか、鍋蓋ほどもある大ガニが見られ、三〇センチメートルほどのジャムシが泳いでいたなどの伝説がある。
現地看板より(松山市教育委員会)
愛媛県松山市に、蛇の釜(じゃのかま)と呼ばれる特殊な地形が存在する。
脆弱な岩盤を水流が細く削り取り形成された、いわゆるゴルジュ状の地形だ。
大蛇伝説をはじめ、いくつもの逸話を持つこの場所だが、現在は車道沿いに小さな解説看板が立つのみで、遊歩道や散策路といったものは整備されていない。蛇の釜の中を覗こうとする場合、ぬかるんだ斜面を自己責任で下っていく必要がある。
蛇の釜の地形的な特徴として、このような特殊な侵食が見られる区間はおよそ100メートルほどに及ぶ。内部には小さな滝がいくつもかかり、岩盤を削ってできた甌穴が点在している。


竹藪をかき分け、鬱蒼とした斜面を進んでいくと、まるで地底洞窟へとつながっているかのような、細く深い大地の切れ込みが現れる。それが蛇の釜だ。
決して派手な景観でもなく、清流が流れているいるわけでもない。しかし地形の特異性という観点で見れば、四国の中でも上位に挙げられる存在ではないだろうか。脆弱な岩質だからこそ生まれた、複雑で予測不能な侵食地形。その姿は、まさに神のいたずらとしか思えない造形を見せている。
過去、この地に暮らした人々がさまざまな噂話を語り、大蛇伝説をはじめとする物語を残したことにも、自然と頷かされる景観である。


