「滑川渓谷」は愛媛県東温市(とうおんし)に位置する渓谷で、水量の少ない小規模な渓谷ながら、他の場所でなみられない空間をもっています。
渓谷の水量からは想像できないほど侵食された側壁に囲まれ、その際奥に滝が落ちる「龍の腹」は滑川渓谷を代表する景観で、グロテスクというか神秘的というか、龍の腹という、生物の体の一部に形容されるのも納得の奇妙な空間です。
龍の腹の側壁に目を向けると、等高線のように地層が異なることがわかります。河床付近は粒子が細かく侵食を受けやすい地層のため、側壁上部よりも下部がより大きく侵食されることで龍の腹ができているのです。
河床付近の地層には、冬季の凍結によるものかタフォニらしきものも観察できます。
龍の腹の最深部に落ちる滝はその真横まで行くことができます。落差は10+5m程度の段瀑で水量もそれほど多くありませんが、周囲の丸みを帯びた地形によりなかなか個性を感じられる滝です。
”遊歩道と水流の近さ”は、滑川渓谷の特筆すべき特徴でしょう。愛媛県には同じような名称かつ滑床を持つ「滑床渓谷」がありますが、そちらは渓谷を見下ろすような位置に遊歩道があるのに対し、滑川渓谷では水流の真横、時には水流の中を横切るように遊歩道がつけられています。
これほどまでに水流に近い(水流に入ってしまう場所もある)遊歩道というのも珍しく、小水量かつ滑床ならではの安全な地形だからこそ実現できた遊歩道です。
渓谷内には特大ポットホールやスライダーなどもあり、水遊びも楽しいでしょう。穏やかな流れで危険も少ないので、暑い季節は賑わっているのが想像できます。