屋久島の渓谷は本州とは比にならないスケールの大渓谷らしい。離島の花崗岩大渓谷という旅情を味わいたく遠征を企画した。
そしてなにより、海外でデカい渓谷をやる人間は屋久島の継続遡下行で実力を試すようだ(私が一方的にライバル視している人物が屋久島に行っているだけかもしれない)。
我々も継続遡下行で実力を試そうではないか、と意気込んだものの天候に恵まれず4日間しか好天は続かない。当初予定していた瀬切川遡行-宮之浦川下降のプランは厳しく、一番興味があった瀬切川キャニオニングに予定変更した。
瀬切川|キャニオニング|2024.04.17 ~ 20
メンバー:ゴルジュクラブ1名|紀伊半島彷徨クラブ1名
1日目
行程を前倒しするため前日にパートナーと事前演習をした宮崎のクロスケオテ谷から鹿児島港へ夜駆けする。翌朝4/17の高速船始発便で屋久島入り。入渓地点のヤクスギランドまでの移動のバスは本数が限られている。近くのスーパーで酒を買い時間を潰す。
ヤクスギランド到着は14時頃。今日は少し登ったところにある淀川小屋までの行程だ。
今回のテーマは遠征装備での泊まり沢。キャニオニングでの連泊装備は重い。天候に恵まれず3泊4日の日程だが5泊分くらいの荷物を担ぎ歩き出す。体感ではザックの重量は25kg以上。こんな重量で沢に入るのは初めてだ。
淀川小屋で初日の行程終了。酒も食料も大量にある。乾杯。
2日目
今日の行程は屋久島最高峰 宮之浦岳〜永田岳を縦走し、瀬切川の源頭から下降開始、できれば上部ゴルジュ入り口まで進みたい。
4日間の行程中この日だけは昼過ぎまで冷たい雨が降り続いた。霧に包まれた極寒の稜線をウエットスーツで黙々と歩く。寒すぎて稜線では1枚も写真は撮らなかった。
瀬切川に入渓。途中何回か渡渉した他の水系は綺麗な源頭部で期待したが、瀬切川の源頭は倒木・泥・ゴーロのクソ渓谷。ブツブツと文句を垂れ、重荷に喘ぎながら進んでいく。
見事な方状節理が人工の石垣のようになっている場所を見つけ行動終了。上下二段に分かれた平坦な岩盤は瀬切川で最上のスイート。上部ゴルジュまではあと1kmほどだ。
3日目
行動を開始するとすぐに大滝となる。上流部とはにわかに信じられない水量とスケール。本州の沢の感覚からすると集水域の2倍くらいは水量があるように感じる。ここから断続的にゴルジュ地形が現れるが、どれもコンティニュアスではなく1,2回ラペルすると一旦谷が開ける。
部分的に見ればなんとも厳ついゴルジュだが、側壁トラバースにシビアさがなく、ゴルジュ地形が続かないので意外と快適に水線下降できる。遡行の場合は大高巻きするしかない地形も点在する。
それぞれの滝が大水量かつ15~30mの落差をもち、ラペルするたびに感動の景色が現れる。この滝も写真の雰囲気では10mほどに見えるが実物は20mの大滝だ。
威圧感を放つ幅4mの水路へと下降する。上流でいくつかのCSが水路を塞ぎ、樋状の大水量滝がブッ刺さる絶望的な滝。が、側壁を簡単にトラバースできるので安全に下降できた。
三日目は瀬切滝(GoogleMapの瀬切川滝とは別物)上部の岩盤で幕。程よい平地がなく、うすうすマットのパートナーはケツが痛いとぼやいていた。
4日目
朝イチから瀬切川の白眉、瀬切滝を下降する。落差40m・ラペルピッチ55mの豪瀑。
瀬切滝の先は巨大ゴーロと水流に触れたら即死系の滝が連続するゴルジュとなるが側壁の傾斜はそれほど強くない。ラペルポイントを調整してお茶を濁しながら下降していく。7本ほどの結構厳つい滝を超えると林道に出会った。
SEA TO SUMMIT. お疲れ様でした。
大川の滝バス停で雨に打たれながら3時間後のバスを待っていると、2人組の青年が最寄り集落まで車に乗せてくれた。みすぼらしい格好で異臭を放つ我々に冷えた酒まで恵んでくれた好青年に感謝。今度は我々が誰かを助けなきゃな。