東京都から高知県に移住した夫婦が、築100年以上の古民家を購入、基本的に夫婦ふたり、たまに友人と一緒にDIYしながら高気密住宅にリノベーションしていく記録です。
裏付けや根拠のない、いわゆる”勘”を多く含みます。また、古民家は物件による構造や状態のバラツキが非常に多く、当記事の内容を、そのまま別の物件に適用できるとは限りません。
各項目には作業に必要となる道具を記載しています。リノベーションに必要な最低限の道具については「古民家リノベ|あると便利な道具たち」をご参照ください。
第3回目は、古民家の屋根を断熱・防水して、現代住宅の性能に近づける方法です。
古民家の屋根事情
住宅を雨や雪などの濡れから守る屋根。夏場は太陽の日差しを遮ることで室内の温度上昇を抑え、冬場は暖気を室内に留めておくための蓋として機能するなど、住宅の快適性に直結する大事な部分です。
現代住宅の屋根は、防水性はもちろん断熱性や気密性を持っているのが当然ですが、古民家ではそうとも限りません。
我が家の場合、土を敷いてから瓦を乗せる「土葺」という方法で屋根が作られていました。どこでも手に入る土を材料とするために安価であることや、瓦で防ぎ切れなかった雨水も多少ならば土が吸収してくれることなどがメリットで、古民家では一般的なものです。
一方でデメリットもたくさんあります。まず第一に、重いこと。土葺は非常に重量があるため、耐震性に問題があります。また、雨漏りを完全に防ぐこともできません。断熱性に関しては壊滅的で、午前中の日光で蓄熱した瓦・土が、午後の一番暑い時間帯に室内に放熱するため、さながらサウナのようです。もちろん、全ての窓を開け放ち風を通すことで室温を下げることは可能ですが、空調で対処することは不可能です。
古民家の屋根を断熱・防水して現代基準の屋根にする方法
DIY・セルフリノベーションで古民家の屋根を断熱・防水した際の手順です。
なお、DIYでの屋根仕上げはスレートが一般的なようですが、外観上の好みでどうしても板金にしたかったため、ここだけ外注しました。
1.下準備
工程を進める前に古民家の屋根構造を確認します。今回撤去するのは瓦・土・ルーフィングです。我が家は30年ほど前に瓦を葺き替えていたのでルーフィングがありましたが、古民家には無いのが一般的です。
野地板から下の部分、木でできた構造は健全であれば再利用しますが、そうで無い場合は補修が必要になります。
1−1.瓦・瓦土撤去
「高知移住2年3ヶ月。古民家を持ち上げて基礎を打ちました」で行った作業ですが、まずは既存の瓦撤去からはじめます。屋根の上から瓦や瓦土、腐った部材などを投げ捨てていきます。
1−2.傷んでいる部分の補修
野地板が露出するところまできたら、傷んでいる部分を確認します。雨漏りや蟻害により傷んでいる部分があれば、今後の作業を進める前に補修しておかなければなりません。
片面だけ軒が短かったので、延長しました。一番楽な延長方法は、部材同士を相欠きして、「エポキシ系接着剤」「垂木ビス」を併用して固定する方法です。軒の延長程度なら、この程度で問題ないでしょう。
補修の仕上げとして野地板を既存の野地板とレベルが合うように貼り直します。
必要な道具
- エポキシ接着剤
- 垂木ビス
日当たりの悪い面・増築に注意
我が家で特に痛みが激しかったのは日当たりが悪く、増築されていた面でした。増築により風通しが悪くなったことに加え、雨じまいが悪かったのか隅木や屋根の切り返し部分などはほとんど腐食や蟻害がありました。
2.屋根を仕上げる
予定している屋根の構造はこの通り。
現時点で野地板まで残っていますので、そこから上を仕上げていくことになります。
施工は下の層からとなり、順番は以下の通りです。
- 合板(構造用合板9~12mm)
- 断熱材
- 胴縁
- 合板(構造用合板12mm)
- ルーフィング
- 板金(仕上げ)
一般的かどうかは不明ですが、コスト・施工性の両面から検討した結果、この順番で仕上げることにしました。
2−1.構造用合板|屋根の耐震補強
まず最初に野地板剥き出しの屋根に構造用合板を貼っていきます。最初に構造用合板を貼る目的は、耐震性向上です。構造用合板を施工することで地震の揺れに対して強い屋根に仕上げることができます。
既存の垂木がある位置にマーキングをして、外さないように釘で固定しいきます。途方もない数を打ち込む必要があるので、エアー工具を用意できると非常に楽です。
コーススレッドでの固定はNG?
耐震性向上を目的に合板を施工するなら、コーススレッドではなく釘を使用したほうが良いでしょう。コーススレッドは負荷がかかると最も簡単に破断してしまうので、耐震補強には不向きです。
構造用合板の仕上がり位置
構造用合板の仕上がり位置は野地板の端が目安です。
2−2.断熱材
合板を施工したら次に断熱材を施工します。断熱材が必要な範囲は室内部分だけなので、室外にあたる軒などは空洞のままにします。
新築をはじめ、一般的には角材を配置してその間に断熱材を嵌め込んでいくようですが、我が家はかなりイレギュラーな方法を選びました。その方法とは、断熱材を隙間なく敷き詰め、その上から100mm角の合板越しに120mmビスで留めるというものです。何故これほどイレギュラーな方法をとったのかといえば、施工性・気密性にメリットがあるからです。
新築とは異なり、古民家の屋根はかなりデコボコしています。板金で仕上げる場合、屋根のデコボコが目立つので補正が必要です。角材の間に断熱材を挟む方法の場合、どうしても角材の下で高さ調整をする必要があり、断熱材の下に隙間が空いた状態になってしまうのです。そのため、発泡ウレタンスプレーなどで隙間を埋める必要があり、施工性が悪いです。
今回の方法では、高さ調整済みのスペーサーで断熱材を押さえ込み、その上から合板の下地になる胴縁を施工するため、断熱材の下に隙間ができないため気密性が向上するだけでなく、角材がないぶん断熱性の向上も期待できます。また、胴縁とスペーサーの層がそのまま通気層(後述)になるのもメリットです。
必要な道具
- 水糸(白糸巻きがあると便利)
構造用合板の切れ端をスペーサーに再利用
スペーサーには1層目で施工した構造用合板の切れ端を使用。より細かい調整ができるように5.5mmの合板スペーサーを追加で用意しました。
2−3.胴縁|通気層/合板の下地
断熱材の固定に使用したスペーサーの上から胴縁を施工します。スペーサーを施工した時点でレベル出しができているので、流れだけを見て施工していきます。スペーサーのピッチは写真では910mmですが、最終的に中間部分にも追加して455mmピッチにしました。
通気層の必要性
屋根断熱をする場合、必ず必要になるのが通気層の確保です。断熱材を施工することで、室内と屋外で温度差が生じるようになり、結露が発生します。結露は断熱材の屋外側で発生するので、通気層を確保しないと周辺の部材がすぐに腐ってしまいます。軒先に網などを貼った開口部を設けることで、スペーサー・胴縁の層を空気が抜けるようになり、屋根内部をドライな環境に保つことができます。
2−5.構造用合板|板金の下地
胴縁の上に構造用合板を施工します。板金の下地になる層で、板金のビスがしっかりと効く必要があるので、12mm厚を使用します。
構造用合板の仕上がり位置
雨樋なしの場合は四方に30mm、雨樋ありの場合はその面は50mm迫り出した位置が仕上がりです。
2−6.ルーフィング|防水
最後にルーフィングを施工します。屋根の防水性を司る重要な部分です。ルーフィングの固定にはタッカーを使用します。
必要な道具
- ハンマータッカー
通常のタッカーよりも速射性に優れるタッカーです。今後も外壁の防水透湿シート張りに使用するので買って損はないでしょう。
完成した屋根の構造
我が家の細かい納まりです。軒部分の断面ですが、ケラバも同様です。ケラバは45*60mm角材の下に隠れる位置、垂木の横にステンレスビス打ちで破風を施工しました。
板金施工
板金施工は外注です。DIYで仕上げる場合スレート葺が一般的なようですが、外見の好みから板金仕上げを選択しました。
屋根完成
屋根が完成しました。以前まで、晴天時の屋根裏はサウナ状態でしたが、今はほとんど暑くありません。
次回は壁を作っていきます。