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四国界隈の難ハイキングコースとして有名な石立山。多くのハイカーを受け入れるこの山に隠された大滝があるらしい。その落差は100m以上。GoogleMapに記載がある百間滝をはるかに凌ぐスケールで、しかも地形は深く侵食された垂直ゴルジュとでも呼ぶべきもの。
大滝の発見者は「三嶺さんぽくらぶ」だと思われる。記録を公開していただいたことに感謝。
メンバー:ゴルジュクラブ2名
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北谷出会付近
北谷の遡行記録は少ない。過去の記録では遊歩道で下部セクションをパスして入渓しているが、そのセクションも確認する。北谷出会いから入渓すると早速側壁が立ち上がり滝が現れる。コイツは右からフリー。
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3月なので水は冷たい
大渓谷のような景観が気分を高揚させる。
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岩盤が露出して釜が多い
渇水期としては十分すぎる水量。侵食された岩盤に釜が点在する美渓である。
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北谷の下部二俣
下部二俣に到着。左は百間滝につながる竜頭谷で百間滝までの区間は連瀑帯になっている。ここは右の本流へと進む。
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二俣すぐ上のゴルジュ
二俣を右に進むとすぐに小ゴルジュとなる。一見難しそうな滝が現れてロープを出すが簡単だった。
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小ゴルジュの滝その2
小ゴルジュF2は左からフリー。
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ガレが多い
美しいゴルジュがところどころ出てくるのは良いのだが、ガレ地帯が多すぎる。全体の8割くらいがガレていた。
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北谷の小ゴルジュその2
小ゴルジュその2。右から簡単に負けるが水線突破する。
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北谷の白眉5m
ここだけ見れば何とも美しいゴルジュである。
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ハンマー投げからのユマーリング
上部の倒木にハンマー投げしてユマーリング。
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990m分岐を左へ
990m分岐を左に取りしばらくガレ地帯を歩くと大岩壁が見えてくる。
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荒涼としたゴルジュ
大滝の落ち口が顔を覗かせている。駆け足で荒涼としたゴルジュへと進んだ。
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北谷|幻の大滝
想像以上の大物。よくぞ発見してくれた、と発見者に感謝するばかりである。
落差は目測で80m以上(登攀した感覚では100m以上)、上部はハングしていて難しそうだ。
緊張の中登攀ラインを見極める。正直なところ逃げ出したかったが登らなければ何のために来たのかわからない。
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登攀開始|最下部はフリー
簡単そうに見える最下部はフリー。意外と傾斜があり途中からロープを出す。右の小テラスで1ピッチ目終了。あまりの岩のボロさに恐怖を感じた。
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登攀中に下部を見下ろす
水流こそ少ないが立派なゴルジュだ。
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中間の小テラスにて
これまで目にしたことがない景観に言葉が出ない。
見た目通りのボロい岩はプロテクションなど無意味で、中間のビレイアンカーも少し引っ張っただけで吹っ飛ぶような代物だった。
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2ピッチ目|出だしのトラバースがいやらしい
リードを交代し、2ピッチ目登攀開始。右の凹角を少し登りそこから水流にトラバースする2mがいやらしい。その上部でマイクロカムが極まるが結果的にこれが唯一の中間支点となった。
そこから右上するチムニーへと進むが、岩っぽい見た目の固い土という感じのボロさで支点が全く取れない。全てのホールドスタンスが信用できないなか、中間支点を取ろうともがくも悪戯に体力を消耗するだけだった。相当の疲労を感じ始め、意を決して上部へとランナウトする。最後まで支点は取れず30m近くのランナウトになった。
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チムニーを抜け雄叫びを上げるパートナー
フォローは日の当たる場所に出て雄叫びを上げていた。
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2ピッチ目終了点から登攀ルートを見下ろす
それにしてもすごい地形だ。まさに垂直ゴルジュと呼ぶにふさわしい形状。
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岩だか泥だかわからないチムニーでの格闘痕
「俺、これで沢ヤになれましたかね」
「かもな。なんにしても2度とやりたくないわ」
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逃げ出す前に記念撮影
ここから先はさらに傾斜が強まり、我々の手に負える代物ではなさそうだ。当然の撤退。
ここまでにフリーで15m、ロープを出して55m登っているがまだ中間付近だろうか。総落差は100m以上あると思われる。
感想
「幻の大滝」その名に相応しい滝だった。脆い岩壁は小水量ながら深く侵食され、非現実的な空間を作り出している。
登攀は難易度こそ高くないが、脆弱な岩ゆえ支点がとれず我々にリスクコントロールできる限界を明らかに超えており、2度目のトライは無いだろう。
追記:2023年10月にボロいと有名?な秋田県は春川万滝沢 赤いゴルジュを遡行したが、北谷の幻の大滝はそれと比較にならないほどボロいように感じた。